日本人の住まいの行方

住宅について考えます

国の中古住宅対策について

 

今回、平成26年の税制改正大綱に、中古住宅に関する項目が加わった道筋と、問題点について考えてみたいと思います。

 

発端しては、国でも40才程度と言われている住宅の一次取得の年齢を団塊ジュニアが超えつつあること、団塊の世代より少し前の世代が取得した初期の郊外住宅地の空き家問題が表面化したことに対しての危機感、住宅ストックが多すぎること(賃貸・持ち家)の3点で、新築一辺倒の住宅政策では、今後空き家が増えて大変なことになると予想してのことだと思います。

 

平成21年度の国土交通白書で、「少子高齢化により転換点を迎えている国土交通行政」という内容が書かれており、リーマンショックと少子高齢化の進行でさすがに変わらないと大変だということで舵を切ったのがスタートでしょうか。

 

2013年12月現在、動いている対策としては、以下の3点ではないかと思われます。

①中古住宅の売買・リフォーム促進  

 ・中古住宅・リフォームトータルプラン

 ・中古住宅の流通促進・活用に関する研究会

②個人住宅の賃貸促進

 ・個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会

 

③空き家管理

 ・空き家管理基盤強化推進事業の公募

 

本日は、①の中古住宅の売買・リフォーム促進について考えたいと思います。

中古住宅・リフォームトータルプランは、2020年(平成32年)までに、中古住宅流通・リフォーム市場の規模を倍増(20兆円)にしようという平成24年3月に発表された計画です。

 

これを受けて、2013年の3、5、6月に、中古住宅の流通促進・活用に関する研究会が開かれています。

この研究会では、建物の資産価値が維持・向上すれば、売却やリバースモーゲージ

より、高齢者やそれに備える人が、容易に高齢者住宅や便利な場所に移転できるし、

団塊ジュニアが、一次取得者層から退出した後も住宅需要が拡大するので、それに至るまでの問題点を研究しようという集まりです。

※リバースモーゲージ

 自宅を所有したまま、金融機関から自宅を担保にお金を借りて、死亡時に売却して

 一括返済するローンで、現在限られた金融機関でしか実施していません。

 

 

中古住宅の流通での問題点として挙げられているのが、

①評価の問題

 リフォームをしても建物評価が上がらず、20年程度で0円になる物件評価

②情報開示の問題

 正確な物件情報を買主へ提供するためにどうすれば良いか

③金融機関による評価の問題

 上記①の問題を踏まえて、金融機関の評価をあげること

④中古住宅の質に関する問題

 買主側が、中古住宅に対して不安を感じているのをどう解消すれば良いか

⑤中古住宅の流通上の障害の除去についての問題

 買主が、建物診断、鑑定評価、リフォームなどの関連サービスを利用しやすいよう

 に求めているのにかかわらず、連携がうまくいっていないこと。

 

上記問題についての自分の意見は

①については、市場の評価が決めることなので、中々難しい問題ですが、

 千葉県の木更津バス便の大規模分譲地で見た事例ですと、需要が少なくなると新築

 する予算の人がほとんど購入しないので、昭和40年代の中古でも実態として土地で

 購入する人がいないので、安い家を探している顧客に購入されたり、地元の買い取

 り会社がリフォームして、売却したりしていました。

 ある程度市場の評価に任せるしかない問題ですが、リフォーム内容のインターネッ

 トでの積極開示や、所有者自身のメンテナンスやリフォームして価値を高める意識

 がもう少し必要だと思います。(見て購入したいと思わせる、古い中古住宅は実際

 少ないです。)

②については、強制するしかないですね。

 お客さんに、調べるのや思い出すのが面倒だと言われたら、不動産会社は売却の依

 頼を取るために、深く突っ込めませんから。

 持つ側の建築確認図面の保管や、リフォーム履歴の保管の意識改革も必要です。

③金融機関は、バブル崩壊、リーマンショック、少子化で不動産評価について懐疑的

 なのではないでしょうか?

 あとは、今までは新築に融資をする方が、分譲業者というプロとの継続取引

 (貸すのが個人でも窓口は不動産会社の提携ローン等)で楽であったので、新築優

 遇の融資体制をとっていますが、新築の分譲数が今後は減るので、中古にも力を入

 れるのではないかと思います。バブルのころは、都市銀行(当時)は、住宅ローン

 なんて、面倒で熱心でありませんでしたから。

④これは、⑤と一緒に考えます。

⑤これは、完全に不動産仲介会社の問題です。

 ・効率的に手数料を上げるために面倒なことを極力避け、それが良い営業マン

  という価値観

 ・購入する方は不安定なので、とにかく早く契約したいということで、1週間程度で

  契約日を設定しないと、物件を押さえてもらえないケースも多いこと。

 ・売却を受けた不動産会社は、とにかく媒介契約(売却の依頼)を切られなければ

  売主からは売れれば手数料がもらえるので、売主を大事にしたいということで、

  余計なことは受けたくない。

 

 これは、業界の構造的な問題なので、何らかの形で強制しないと絶対にかわりらな

 いでしょう。

 自分が考える解決策は、

 (1)売却時に売り主の情報開示義務

 (2)買主の要望があれば、売買契約前に地盤調査、建物診断やリフォーム見積も

    りを出すのを売却側は拒めないことにして、それを契約前に買主に告知する

    義務

    ※大分前に、契約前に地盤調査ができないとお客さんに言ったら、

     「不動産を買うってギャンブルみたいですね。」と言われたことがあり

     ます。

    ※何もしないで先に購入したいという人がいたら、物件を取られるのも

     しょうがないでしょう。(そこで不動産会社に煽られない意志も必要)

 (3)購入する側の意見が弱いのは、知識不足とバラバラな意見の集約がなされな

    いからなので、購入する側が安心して相談できる、

    「インターネット上の相談窓口」の作成をして国土交通省が管理し、信頼で

    きる委託専門家による回答、よくある質問や購入にあたっての情報を掲載

    ※ある程度意見が集約できれば、長期間継続しなくても良いと思いますが、

     認知度アップが課題ではあります。

 

以上、不動産業界特有の取引の文化がある程度定着しており、緩いやりかたでは変わりません。

購入予定者からは、いくら物件を紹介しても、案内しても、良い物件が他社から出て他社で買ってしまえば「ただ働き」という問題もあります。

今日は、長くなったのでこのくらいで、明日は続きを書きます。