今後の住宅産業は?
今後の悲観的な材料は、
・非正規雇用率の増加
・所得の低下
・住宅購入適齢期の人口減少
・未婚率の増加
・離婚の増加
・物を所有するより借りるというシェア指向の傾向
・将来への不安(雇用や社会保障費、国家予算)
都心の大企業に勤める人については、高所得で婚姻率も高そうですし、これからも持ち家を持つのでしょうが、上記の状況を見ると今後は厳しいのは目に見えています。
これからの傾向としては、今あるものを使うか、安いものを借りるかということが増えてくるのではないでしょうか?
若い人については、シェアハウスなどを利用したい人も増えてゆくのでしょう。
(資料出所) | 総務省「労働力調査(特別調査)」(2月調査)及び総務省「労働力調査(詳細結果)」(年平均)長期時系列表 |
非正規雇用率は、2003年から急激に増えていますね。
特に矢印の卒業直後と思われる、15~24才の非正規雇用率の増加は異常です。
この年代の人たちが、これから住宅購入適齢期になる年代です。
この人口推移でみると、非正規雇用の人が増えるのが15~24才の10年後ですから、30才前後の崖下のように少なくなっている所です。
住宅購入の平均年齢は、30代後半と言われているので、40才前後の人口が多いところの人の多くは、この消費税の駆け込みくらいで購入しているでしょう。
そうすると、非正規雇用率が急激に増えて、人口は急激に減るということです。
新築住宅産業は、今後は非常に厳しい状況に置かれます。
この状況は、製造業の国外移転で中産階級が減り、その人員が介護等の所得の低いサービス業に移動して起こっていると言われていますが、それが今度は住宅産業に影響を与えようとしいています。
都心所得が高い人がいる以外のエリアでは、内需の全産業の所得下降圧力がかかっているのです。
中産階級の仕事は減り、バイトの時給は人手不足で上がるという不思議な現象が起こっています。
新築住宅が減るだけではなく、中古住宅も都心近辺以外は下落は避けようがありません。
非正規雇用が多くなれば、住宅ローンも組めないですし、多くの家賃は払えません。
独身が多くなれば、親と同居のままの人も増え、適齢期になっても購入しない人も増えます。
若い人の所有欲の無さもそれに拍車をかけます。
現在の状況は、下記の特殊な事情で一時的に良くなっているだけです。
2008年のリーマンショックで買い控え
2011年の東日本大震災で買い控え
→ 消費税の駆け込みで一気に建築・購入
→ 団塊ジュニア世代の人口パワー
10年後は現在、住宅・不動産業に従事する人も、多くは高齢者住宅の募集や介護などの職に転職していることでしょう。
目端の利く人は、今のうちに急激に変化する時代を予想し、新しい道を模索しています。
「これから3年 不動産とどう付き合うか」を読みました
日経新聞に不動産関係のコラムを書いている長嶋修さんの「これから3年 不動産とどう付き合うか」を読みました。
不動産関連の書籍は、「買った方が良い」と「買うと損」という極端な本が多いのですが、非常にバランスの取れた本でした。
インフレに不動産は強いという断定的なことを言う人が多い中
経済成長を伴わないインフレ、スタグフレーションの下では、不動産は下落します。
当然のことですが、景気が悪くなれば所得は下がり、先行きは見えなくなり、「購入したい人及び借り入れ出来る人」が少なくなるので、需要と供給の関係で流通性が悪くなり不動産価格は下がります。
生産年齢の人口減、東京への一極集中、以前は東京まで通勤する人が住んでいた高度成長期に開発された不便な住宅地の空き家問題、今購入適齢期になっている層の非正規雇用の増加などから、需要と供給の関係で今後の不動産相場は、都心と都心から30分圏内くらいまでしか安心だと言えません。
OECD(経済協力開発機構)に加盟している国々の大多数は、10年間の「住宅需要」「住宅建設見込み」を推計しています。これは簡単にいえば「人口動態などの指標に基づき、住宅総量目標を設定する」ということです。
空き家問題で苦労している自治体が、ある程度自らコントロールできる新規の開発許可をほぼ無条件で出しているというのは滑稽です。
住宅市場では、これから画期的な構造改革が始まります。中古一戸建ての評価方法を、国が根本的に見直そうとしているのです。これまでのように20~25年で建物の価値をゼロとみなす慣行を改め、築年数にかかわらず、実際上の価値を測る・・・・
米国では住宅投資に見合うだけの資産額が蓄積しており、この資産額は言うまでもなく米国国民のものです。
所得の低下により以前よりは中古住宅への関心度は上がっています。国主導で評価方法を見直し、住宅診断や修繕・点検履歴などの蓄積で安心して中古住宅を購入できる仕組みを作ることは非常に必要でしょう。
しかし、新築抑制の政策も併用しないと画期的には進行しないと個人的には思っています。
長嶋氏は、1999年に不動産コンサルティング、住宅診断の「さくら事務所」を設立し
刺激的なことを言う両極の人が多い この業界では珍しく、バランス感覚を持った人ですので、今後もぜひ活躍して欲しいと思っています。
国土交通省関連の情報を見ると、ここ数年は中古住宅の活用に関することに非常に労力を割いていますが、新築住宅の供給の抑制をしない限り、新築分譲業者は、土地の仕入れ値を買い叩けば販売価格は下げられるので、需要がある限り供給し続けます。そうすると中古住宅の価格はどうなるかは明らかです。
高齢者がサービス付き高齢者住宅、民間の有料老人ホームに入居する場合も、自宅をバリアフリーリフォームするにしても、年金ですべて賄えるケースは少なく資金が必要ですので、その資金を売却や住宅を担保にした借り入れなどで捻出するには中古住宅の価格維持が必須です。
国土交通省としても通常住宅のストックが過剰で、高齢者住宅のストックが無いのに、通常の新築住宅だけが供給し続けられ、高齢者が持つ中古住宅が下落する状況は避けたいはずです。
国土交通省のシナリオは、
若年者 → 賃貸住宅
中年 → 中古住宅
高齢 → 高齢者住宅及び高齢者リフォーム済み住宅
金持ち → 新築住宅
と言うことだと思います。
この中でストックが足りないのが、高齢者用の住宅だけです。
高齢者の中古住宅を新規の住宅一次取得者に流通させて価格を維持し、その売却資金を高齢者住宅に投資して欲しいのです。
また、国土交通省は、民間資金の活用を図るため、ヘルスケアリートの活用に向け、高齢者向け住宅等の取得・運用に関するガイドラインの整備、普及啓発等(来年度中)」を行うこととされております。
しかし、65歳以上の持ち家率が80%を超える中(統計局ホームページより、平成20年)、介護が必要になるまで自宅に住み続けたい人は多く、現在国が推進しているサービス付き高齢者向け住宅で要介護の入居者に対応できるところは少ないと思われます。(必須なのは安否確認サービスと生活相談サービスのみ)
サービス付き高齢者向け住宅は今後普及するのでしょうか?
年金と介護保険で入居できる郊外の土地が安いところにたくさん作り、単身高齢者が介護が必要になったら親族が放り込めるようにするのでしょうか?
そもそも社会保険制度と年金制度は維持できるのでしょうか?
国家戦略特区
国家戦略特別区域は以下のエリアです
東京圏の外国人受け入れに絞って考えてみると、色々報道されている中では、家事や育児、建築業界、事業経営者などを受け入れる話が出ています。
東京は都心部のみというのは、住宅地を抱えている区はお金持ちが治安を気にして受け入れなかったのでしょうか?
インドの人が多い江戸川区が外れているのは気になります。
また、不動産関連では、アパートやマンションの空き部屋を外国人観光客向けの宿泊施設として使えるようにするということも考えているそうです。
他の入居者のクレームや所有者の意向を考えると、古い入居が厳しいアパートなどの臨時収入として使われることになるのでしょうか?
アパート管理会社が運営するならば、外国語が出来なくてはいけなくなりますね。
今後は、中国語や韓国語が出来る人は仕事に困らないかも知れません。
オリンピック関連や家事の補助、事業家などはやはり、都心に近いところを好むことを考えると、特区の中で都心までの物理的な距離が近くて、都心よりは賃料が安い、大田区や川崎区、横浜市鶴見区などのエリアは、今後外国人が増えてくる可能性があります。
また、都心で無くても日本に事務所を作って企業を経営したいという人は、成田の空港に近いところなどは、賃料が安く国に帰る便が良いのではやるかも知れません。
どちらにしても、居住地も特区内ということでしょうし、勤めは都心ということなら、都心から30分以内くらい(東京駅を起点として横浜方面に行くと鶴見くらい)の入居が厳しくなってきている20㎡を切るワンルームなどは、今後需要が復活してきそうですね。
神奈川県では、賃料が高くなり厳しくなる層や、外国人を嫌う層が横浜駅より南側に下ってくるかも知れません。
どちらにしても、神奈川県も横浜・川崎中心でしょう。
日本の一極集中は今後も加速して行きそうです。
自治体半分の存続が厳しくなる
5月9日の日経新聞に以下のような記事が載って話題になっています。
日本の人口が減ると、全国の地方自治体の維持が難しくなるとの長期推計が相次いでいる。元総務相で東大の増田寛也客員教授らは8日、2040年には全国1800市区町村の半分の存続が難しくなるとの予測をまとめた。国土交通省も全国6割の地域で50年に人口が半分以下になるとしている。ある程度の人口を保つことを前提にした国土政策は見直しを迫られる。
また、5月1日放送のNHKクローズアップ現代でも以下のようなことが報告されていました。
少子高齢化が叫ばれてきた日本。しかし、いま多くの地方では高齢者すら減少し始め、日本全体が縮小しようとしている…。NHKでは最新人口統計を元に、これまでにない詳細なデータ分析を研究機関の協力を得て実施。その結果、2040年には地方の衰退だけでなく、日本自体が縮小していく危機が迫っていることが分かってきた。最も深刻なのは既に高齢者すら減少を始めている市町村が急増していることです。
過疎地のインフラ維持の困難が目の前に迫ってきており、意図的に同時期に報道されているのでしょうが、問題なのは間違いありません。
両方で取り上げられているのが、子供を産む年齢の女性の動向です。
地方都市で高齢者すら減り始めているのが、高齢者の消費を当てにしている地方産業を衰退させて、収入を得るためには大都市に移転しなければならないことです。
首都圏に住んでいる身で、地方のことをあれこれ言うのは無責任だというのは承知の上で、自分の考えを言うと以下の通りです。
①半径〇km以内に小学校が無いエリア(通学が厳しい)のインフラ更新は行わない
などの国によるルールの策定
②インフラ維持が出来なくても暮らして行ける技術や製品の開発促進策
③国から地方自治体への大幅な権限移譲
④人口比例の公共事業費の配分
⑤コンパクトシティ化の推進
あまり目新しい意見では無いですが、お金(税収)が減っているのに、借金(国債)
をしてお金を使い続けているのはどう考えても異常です。
基本的には「小さい政府」を目指す方が良いというのが自分の考えなので、まずは、高度成長期に一回膨らませた無駄使いをいかに減らすかというのが前提条件です。
あとは、道州制とまではいかなくても、現在の人口が約1億3,000万人で東京都の人口が約1,300万人なので、10程度の自治体に分けて公務員も減らさなくてはいけません。
とにかく、一度切り詰めることが出来る極限まで切り詰めて、そのあとに成長分野や重点都市などにお金を配分するのが良いでしょう。
一般的に考えれば誰で考えるのがこのようなことでしょう。
しかし、利害関係は容易に調整出来ません。
本来は、地方都市がもっとモチベーションを高く持って改革してゆかなくてはいけないのでしょうが、国が権力を離さないのでそうもなりません。
インフラの集中などの話も、粘り強く地元で話し合わなくてはいけないのでしょうが、当事者意識が中々持てないのだと思います。
老朽化した大企業と同じで、権力やお金を握っておいて、あれこれ当事者意識のない思いつきの指示を出して、困ったときは、何で自分で出来ないんだ、自分で解決しろ、と言う感じでしょうか?
日本の全ての問題は、当事者意識が無く新しい発想には理解を示さないのに、権力や優越感が欲しい、既得権力者の問題だと思います。
「日本も企業も老害でダメになって行くのでしょう」
ソニーの不動産会社設立
先日ソニーは、不動産の売買仲介、賃貸管理をする事業に乗り出すことことを発表しました。
発表によるとソニーは今月、不動産事業を手がける子会社を新たに設立し、ことし8月から事業を始めるということです。
ソニーとしては、社長交代からちょうど二年、これから様々な新規事業を発表してゆくのでしょう。
しかし、偶然だと思いますがこのタイミングは非常に良かったと思います。
それは、今不動産業界が良いのは、リーマンショック→東日本大震災の買い控えの反動、消費税の駆け込み、団塊ジュニアの購入適齢期等の全てのタイミングがピッタリ合ったからであり、これから不動産市場は不動産の購入適齢期の人口の急激な減少、購入世代の所得悪化及び非正規雇用の増加で悪くなってくることが約束されているからです。
そして、既存企業が大規模な構造改革を迫られる中、良いところだけ真似して、低コストで参入すれば十分勝ち目はあります。
新規事業第一弾に不動産を選んだところから、おそらく残りも内需産業が続くような気がします。
世界市場の人材の層の厚さ、人件費の差、技術革新のスピードの速さなど、世界の舞台で全ての分野で戦い続けるのは大変です。
未経験分野を一から始めても、日本人との競争の方が楽だ思うのは自然な流れです。
問題点はどこでしょうか?
①賃貸管理
ポイントは、徹底的なコスト削減でしょう。
賃貸管理があまり今まで注目されなかったのは、その利益率の低さ、マンパワーが必要なことでしたが、アウトソーシンングの効率的な利用、正社員を徹底的に少なくすること、ITやコールセンターの活用で、利益率は改善できると推測します。
但し、大口や都心の物件を中心に管理会社変更を狙うのなら、余程のインパクトがある切り口が必要です。
問題が無い限り、所有者は管理会社を変えるのは面倒なので、そこにどうやって入って行くかです。
入居率の悪化や相続、売買などがきっかけになると思います。
急激には増えないと思いますが、事業スキームが甘くなければコツコツやれば赤字が出る業界ではないので、それなりの成功は納めるでしょう。
しかし、グループを浮上させるような力になるとは思えません。
出向・転籍先には良いでしょう。
②売買仲介
これは非常に理解しにくい業界です。
実際取引をしていても、この業界の本質を理解していない人もいる位に解りにくい業界です。
一言でいうと「飴とムチ」で人を使う業界で、数字が人格とも言われています。
いくらクリーンなイメージで売っている大手系列の企業でも、全ての営業マンは数字が命です。
売却の受注とその販売を中心とする「大手系」と、広告で購入希望顧客を集めて高率歩合給やフルコミッションで営業を行う「荒っぽい系」の二つに分けられます。
その他の会社はシェアは少ないと言っても良いでしょう。
大手系を目指すなら、チラシの定期的ポスト投函、看板、住宅地への電柱広告等、WEB上以外でも、あらゆる機会に目にするような広告展開をする必要があります。
売る顧客は、売ると決めるまでは全く不動産会社に興味はありませんが、ふと思った時に一番先に目に触れさせる必要があるのです。
あとは、成績を上げないと会社に居られないという企業文化も重要です。
このプレッシャーがないと成績が全然違うからです。
皆が目にする大手の会社も、ボーナスと言う名の歩合給という「アメ」と、上司の叱責という「ムチ」と大手の看板をうまく融合させて今に至っています。
購入顧客を集める会社は、多くの会社は歩合中心で、成績をそれなりに上げなければ生活できないようなシステムにしている会社が多いと思います。
高い買い物をするという心理的障壁を崩すには、非常に大きなエネルギーが必要だからです。
人の入れ替わりも激しく、基本的なことは当然知っていなければいけませんが、あまり難しい話をすると迷ってしまうので、知識は無い方が成績が上げれらる傾向があります。
顧客が物件を気に入ったと見えたら、キメることだけに集中できる人が良いのです。
このような状況で、どちらのタイプ選んでるのか興味があります。
全く違う素晴らしいビジネスモデルを構築してくれていると良いのですが、『購入顧客を集める広告戦略だけを練って集客できれば勝てる』ということですと、新築マンションなどでしたら良いですが、売買仲介の購入顧客で収益を上げるのは難しいと思います。(手数料のディスカウント等、画期的な策があれば別ですが)
買わない顧客は収益どころか人件費というお金を奪う人でしかない、他社と競合した時に勝てないといけない、ということを忘れてはいけません。
営業マンのモチベーションも大事です。
少し長くなりましたが、不動産売買仲介は非常に解りにくい業界です。
ソニーには、売買仲介の悪しき伝統を打ち破る、本当の意味での顧客本位の新しい仕組みを作って、ぜひ業界の悪習を破って成長して欲しいものです。
所得二極化時代
現在の日本の年齢別人口分布は、高齢者が多くなっていることは多く報道されていますが、住宅購入適齢期の人口減少については、あまり語られていません。
団塊ジュニア世代の一番人口が多い2014年に41才になる世代との比較ですと、
38才‐89.0%
35才‐79.4%
32才‐73.2%
29才‐69.9%
となっています。
それに加えて、団塊ジュニア世代以降の世代については、バブル崩壊後の就職難の世代で非正規雇用が多く、未婚率も高く、持ち家志向も低いと言われています。
住宅購入の平均年齢は37~38才と言われており、5年前のリーマンショック、3年前の東日本大震災による買い控えによるストックが、消費税増税、アベノミクスに重なり住宅の需要は伸びましたが、これが最後の伸びになることは、「人数が減る」「既婚者が減る」「所得も減る」ということから明らかです。
日本人の一方向に進むと皆同じ方向に進む集団指向からすると、昭和40年代の不便な郊外開発物件の相続の増加も考えると、需要と供給の関係から不動産価格は、一部の都心周辺エリア以外は下落するでしょう。
そして、現在進行形で進んでいる所得の二極化、グローバル化は持ち家志向を減少させると思われます。
J-REITの普及等により、都心部に優良賃貸物件も増えているので、海外出張や転勤の多い、高所得者層も賃貸指向が進むと思われます。
転勤の無い内需産業では、消費が旺盛な若年層の減少や所得低下により、高所得者は減って行くでしょう。
現在 これから
上流家庭 持ち家多い 持ち家と都心の高級賃貸
中流家庭 持ち家多い 下流家庭に没落(一部は残留)
下流家庭 安めの賃貸 安めの賃貸(予算は下がる)
この状況で、住宅ストック過剰な状況にこれから突入しようとしているのです。
これは、想像でなく現在進行形で進んでいることなのです。
間違いなく、今後の不動産業の形態は変わってきます。
①郊外の新築供給はほぼ難しくなるでしょう
ストック過剰な中古価格が下落して新築では採算が合わなくなります。
好立地に開発されるものが、中小デベロッパーにより少数供給されるにとどまる
でしょう。
②都心とその周辺は賃貸・売買ともに現在の状況に近いものが維持でき、高級賃貸は
増えてゆくでしょう。
エリア的には、周辺部はブランドの劣化が起こり、今人気である西側地域が下がり
東京への距離が近い割に安い、東側地域の人気が上がるでしょう。
③郊外の中古流通と賃貸が面白くなってきます。
今まで、建売・新築マンションを購入していた層が、中古購入と賃貸に流れ込んで
きます。
賃貸は供給過剰により選別が広がり、良質で安いファミリータイプ物件の人気が高
くなり、入居率は現在を維持できるでしょう。
シングル向けについては、単身者が都心寄りに移動するか、地元に残るならパラサ
イトシングルになるので厳しくなります。
一番変化するのが、所得は低くても持ち家が欲しい層の動きです。
需要の減少により、新築業者も土地の仕入れ値を下げて格安物件を供給するでしょ
うが、格安中古住宅が動くようになってくるでしょう。
新築供給を主に行う分譲業者があまりにも多く、急に業態は変えられないことから、ストック住宅が超過剰時代になることは間違いありません。
そうすると、中古物件の価格下落も間違いありません。
一人がほぼ一軒しか持たない家が、空き家があるのに更に供給され、人数や所得が減るので、下がらないという理由を探す方が難しい状況です。
来年1月の相続税基礎控除の減額、最高税率の上昇に向けて、節税効果がある賃貸住宅もまだまだ建築されます。
来年のこの時期くらいに、ストック過剰が社会問題になってくるでしょう。
そこで来なくても、消費税10%の段階で色々出てくるでしょう。
今年は嵐の前の静けさで、少し骨休みをしておいた方が良いかも知れません。
中古住宅流通活性化対策
3月は年度の終わりと言うこともあり、国土交通省の中古住宅関連のまとめが多く出てきています。
また、自分自身も「不動産流通事業活性化・事業者間提携協議会シンポジウム」と
「耐震診断資格者講習・耐震改修技術者講習」にも参加してきました。
耐震診断については、一般診断法と精密診断法の計算方法に従って診断するということですが、耐震補強については、壁や金物、筋違を適切に加えればプラスになることは間違い無いですが、やはり技術論ではなく耐震補強の実績が蓄積されないと確信をもって補強は出来ないと感じました。
しかし、実験を何度もいろいろな建物ですることも出来ないので難しいですね
兵庫耐震工学研究センターに「Eディフェンス」という施設があり、実験の動画が公開されています。
https://www.youtube.com/watch?v=Dn7fw2T2lmI
「中古戸建ての建物評価の改善に向けた指針」
「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」
「個人住宅の賃貸流通の促進」
等もまとめられており、国土交通省のWEBサイトから資料を見ることが出来ますが、
根本的な問題として、今の日本の政治全般に言えることですが、既得権者の不利益になることは出来ず「新築住宅の供給調整」や「開発許可の制限」等まで踏み込めないので問題は解決しないと思います。
結局は、大きな土地を買うのは新築分譲業者だけなので、販売時に容易に売れる仕入れ値に合わせて土地を購入して、中古住宅の値崩れを横目で見ながら、少ない緑も薙ぎ倒し、新築住宅が供給され続け空き家はどんどん増え値崩れするでしょう。
少子化による不動産価格の下落による、中古住宅の値崩れが起きることは誰の目にも
明らかです。
今年41才になる団塊ジュニアと言われる世代の頂点からの比較で言うと、3才下で10%
6才下で20%人口は減少します。
さらに、これから下の世代は就職が厳しかった世代で、非正規労働者や低所得者が多いと思われます。
昨年のアベノミクスの盛り上がりと、消費税の駆け込み、リーマンショック・震災の
買い控えの反動というプラス要素を考えると、今後は一部都心以外は下がる方向性しか見出せません。
そして今後の問題点は、
・夫婦共働きの増加
・年金支給年齢の上昇による生涯労働の必要性
・郊外の中古住宅の値崩れ
・長寿化による要介護者の増加
・少子化による介護人口の減少
現在、認知症で一定以上の症状がある人の居住形態の半数は居宅です。
それを支えているのは、専業主婦や退職者であることが想像できます。
建築を推進しているサービス付き高齢者住宅は介護対応は必須ではありません。
これから導き出されるのは「どんな状態になっても自宅に居住し続け、現役世代も働かない訳にはいかないので、要介護者を介護保険で賄える部分だけデイサービスなどに出しあとは放置する」ということです。
現在の経済情勢を考えると、低金利での国債発行も早期に限界が来て、社会保障費や年金支給についても厳しい状況になることが予想されます。
労働人口減少に従って経済規模が縮小し、日本国力への信頼が損なわれた時には、どうなるのでしょう。エネルギー価格も上昇傾向にあり輸入額は増えて貿易赤字も拡大しています。
先日財務省のWEBサイトにアップされていた、大和総研の報告書によると、団塊世代がすべて後期高齢者になる2025年から長期金利が5%になる程度で、
「政府債務は2040年度末でGDP比420%。現実問題としてこの計算に実質的に意味は無く、利払いの雪だるまが発生すれば財政は破たんする」と述べています。
しかし、現在は未だに新築住宅にも固定資産税の優遇を行っている状況です。
国土交通省でも、少子化で来るのが必須と予想される郊外住宅の中古価格の大幅下落を防がないと、ストック過剰な住宅で唯一足りていない高齢者対応住宅への移転がスムーズに進まないと認識しているから、これだけの中古住宅関連の会議を行っているのでしょうが、どの分野でもそうですが、既得権者と現在の急激に変化する世の中についていてない高齢者に甘言を言い続けなくてはいけない政治には期待できません。
政治家も国家公務員の方々も誰も悪くは無いのでしょうが、住宅と介護の問題は、民間で解決しなければいけないのです。
今後のポイントは
介護住宅改修を個人で出来るような商品の開発
空き家の活用による低所得高齢者対策
ICTによる地域住民の相互扶助システム構築
行政機能を補助するNPO等への投資や寄付の促進
所得の二極化で中流から下流に流される層が、必要に迫られて犠牲を払いながら行って行くことになるでしょう。