日本人の住まいの行方

住宅について考えます

「これから3年 不動産とどう付き合うか」を読みました

 

日経新聞に不動産関係のコラムを書いている長嶋修さんの「これから3年 不動産とどう付き合うか」を読みました。

 

不動産関連の書籍は、「買った方が良い」と「買うと損」という極端な本が多いのですが、非常にバランスの取れた本でした。

 

インフレに不動産は強いという断定的なことを言う人が多い中

経済成長を伴わないインフレ、スタグフレーションの下では、不動産は下落します。

 

当然のことですが、景気が悪くなれば所得は下がり、先行きは見えなくなり、「購入したい人及び借り入れ出来る人」が少なくなるので、需要と供給の関係で流通性が悪くなり不動産価格は下がります。

 

生産年齢の人口減、東京への一極集中、以前は東京まで通勤する人が住んでいた高度成長期に開発された不便な住宅地の空き家問題、今購入適齢期になっている層の非正規雇用の増加などから、需要と供給の関係で今後の不動産相場は、都心と都心から30分圏内くらいまでしか安心だと言えません。

 

OECD経済協力開発機構)に加盟している国々の大多数は、10年間の「住宅需要」「住宅建設見込み」を推計しています。これは簡単にいえば「人口動態などの指標に基づき、住宅総量目標を設定する」ということです。 

 

空き家問題で苦労している自治体が、ある程度自らコントロールできる新規の開発許可をほぼ無条件で出しているというのは滑稽です。

 

住宅市場では、これから画期的な構造改革が始まります。中古一戸建ての評価方法を、国が根本的に見直そうとしているのです。これまでのように20~25年で建物の価値をゼロとみなす慣行を改め、築年数にかかわらず、実際上の価値を測る・・・・

米国では住宅投資に見合うだけの資産額が蓄積しており、この資産額は言うまでもなく米国国民のものです。 

 

所得の低下により以前よりは中古住宅への関心度は上がっています。国主導で評価方法を見直し、住宅診断や修繕・点検履歴などの蓄積で安心して中古住宅を購入できる仕組みを作ることは非常に必要でしょう。

しかし、新築抑制の政策も併用しないと画期的には進行しないと個人的には思っています。

 

長嶋氏は、1999年に不動産コンサルティング、住宅診断の「さくら事務所」を設立し

刺激的なことを言う両極の人が多い この業界では珍しく、バランス感覚を持った人ですので、今後もぜひ活躍して欲しいと思っています。

 

国土交通省関連の情報を見ると、ここ数年は中古住宅の活用に関することに非常に労力を割いていますが、新築住宅の供給の抑制をしない限り、新築分譲業者は、土地の仕入れ値を買い叩けば販売価格は下げられるので、需要がある限り供給し続けます。そうすると中古住宅の価格はどうなるかは明らかです。

 

高齢者がサービス付き高齢者住宅、民間の有料老人ホームに入居する場合も、自宅をバリアフリーリフォームするにしても、年金ですべて賄えるケースは少なく資金が必要ですので、その資金を売却や住宅を担保にした借り入れなどで捻出するには中古住宅の価格維持が必須です。

 

国土交通省としても通常住宅のストックが過剰で、高齢者住宅のストックが無いのに、通常の新築住宅だけが供給し続けられ、高齢者が持つ中古住宅が下落する状況は避けたいはずです。

国土交通省のシナリオは、

 

若年者 → 賃貸住宅

中年 → 中古住宅

高齢 → 高齢者住宅及び高齢者リフォーム済み住宅

金持ち → 新築住宅

 

と言うことだと思います。

この中でストックが足りないのが、高齢者用の住宅だけです。

高齢者の中古住宅を新規の住宅一次取得者に流通させて価格を維持し、その売却資金を高齢者住宅に投資して欲しいのです。

また、国土交通省は、民間資金の活用を図るため、ヘルスケアリートの活用に向け、高齢者向け住宅等の取得・運用に関するガイドラインの整備、普及啓発等(来年度中)」を行うこととされております。

 

しかし、65歳以上の持ち家率が80%を超える中(統計局ホームページより、平成20年)、介護が必要になるまで自宅に住み続けたい人は多く、現在国が推進しているサービス付き高齢者向け住宅で要介護の入居者に対応できるところは少ないと思われます。(必須なのは安否確認サービスと生活相談サービスのみ)

 

サービス付き高齢者向け住宅は今後普及するのでしょうか?

 年金と介護保険で入居できる郊外の土地が安いところにたくさん作り、単身高齢者が介護が必要になったら親族が放り込めるようにするのでしょうか?

 

そもそも社会保険制度と年金制度は維持できるのでしょうか?