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日本人の住まいの行方

住宅について考えます

『「空き家」が蝕む日本』 を読みました

 

長嶋修氏の『「空き家」が蝕む日本』を読みました。

 

1章と5章では、いつも長嶋氏が主張する、日本の不動産仲介業がいかにおかしいかの主張を繰り返しています。(主に大手のことを指していると思われます。)

私もそう感じないでもないですが、2000年頃から普及してきた職場でのパソコンを

社会人になった当時から触っていた層が住宅購入適齢期になり、不動産の購入・売却をするときに色々とインターネットで調べ、その内に大手仲介業者の化けの皮は剥がれると私は思っています。

今まで長嶋氏のような方が活動してきたことにより、少しずつ良くなっていると思うのでこれからも続けて欲しいものです。

 

簡単に言えば、インターネット上に多くの有益な情報がタダで見れるこの現在、不動産仲介業界は、「情報を隠したり、大切な不動産の値段を適当に付けて」多くの利益を得ているということです。

 

2章では本題の空き家問題です。

2008年総務省データによれば、全国の空き家数は760万戸、空き家率で13.1%と7~8件に一件が空き家という状況。・・・・・

1963年から2008年までの45年間で、住宅数の伸びが三倍弱であるのに対し、空き家数は十倍以上に膨れ上がっています。

 

23区内でも、平均を上回るおおよそ20~30%の空き家率で、空き家のある立地についても、農山漁村ではなく、市街地や市街地周辺が約六割だそうです。

 

なぜ、空き家が放置されるかという理由では、家が建っていると固定資産税の優遇がされるという「住宅が足りなかった時代の国の新築優遇策」が残っている状況でバブル崩壊がおこり、経済波及効果が高い新築住宅の建設促進を国が後押ししたから、と述べています。

氏は、これを止めて「三年以上空き家にしていた場合は課税される」と言う方法を提案しています。

また、新築を造りすぎるのもいけないということで、西欧の多くの国で行われている国による10年間の「住宅需要」「住宅建設見込み」を日本でも行った方が良いと言っています。

 

私は、固定資産税の件は賛成というか、この問題は最近クローズアップされているので、近いうちに何らかの方針がでると思いますが、新築抑制はそれでなくても10年後に何社残れるかという、「少子化・所得低下・未婚化・所有から利用というトレンド」によるハウスメーカーや不動産開発会社の状況を更に悪化させるので難しいと思います。

(個人的には需要が大幅に無くなり厳しくなるのは目に見えているので、時計の針を

 早く進めて少しでも景気が良いうちに早くダメになった方が良いと思いますが。)

 

次に問題としているのが、中古住宅流通の促進と建物の評価についてで、中古住宅の価値が25年程度でゼロになる評価方法により、中古住宅の価値が急激に下がり個人資産が減少しているということです。

個人の資産が減る一方、新築建設によるGDPの上昇などの景気対策のために新築の優遇を続けているということです。(中古住宅売買はGDPに加算されないそうです。)

 

アメリカでは住宅投資額(リフォームを含む)と住宅価格の額が比例しますが、日本では投資額と住宅価格は大きく差が出てきます。

↓この国土交通省の資料の10Pに出ています。

http://www.mlit.go.jp/common/001002572.pdf

 

さすがに国もこれは大変だということで、色々な会合を行っているようです。

何が大変かというと、

1、高齢者施設や高齢者リフォームへの投資の原資が無くなる

  通常の人の住宅は余っていますが、唯一足りないのが高齢者が居住する住宅で

  中古住宅の価値がある程度維持できないと、売却して高齢者施設へ入居したり、

  住宅を担保に借り入れして高齢者リフォームに投資出来ない。

2、都市圏郊外の住宅相場の大幅下落による個人資産の低下

  不動産を所有している人が売却したときに手にするお金も減り、住宅ローン

  より売却した場合の金額が低い人も増え、返済が滞った人は家を競売され借金だ

  け残るという人も増える。

 

この件はこの本には書いていませんが、氏が述べている日本独自の建物評価の急激な下落は上記のような状況を生み国も動いているということです。

 

日本の中古住宅の寿命が短い理由としては、適切な点検や修繕を行う慣習が無かったからで、

しっかりと「設計」され、図面どおりに「工事」が行われ、適切で予防的な「点検・メンテナンス」が行われれば、木造住宅でも100年は持ちます。「木造住宅は耐久性が低い」とか「地震に弱い」というのは行き過ぎた誤解です。これまでは前述の三拍子がそろわない建物がたくさんあったからでしょう。

 

氏の言うとおり、購入する側や所有する側が、手間や費用を惜しみすぎることにより、寿命が短くなっているという意見には賛成です。

所有者が所有しているときにしっかり点検やメンテナンス、適切なリフォームをすれば、多くの中古住宅は現在より高く売れると思います。

 

以上が本書の核心部分です。

 

あとは、新築偏重の住宅政策で賃貸住宅は持ち家までのつなぎになってしまって、賃貸経営が厳しいこと、エネルギー政策と住宅、海外不動産投資、等について書かれています。

 

個人的感想としては、全ての現在の日本が抱える問題と同じく、既得権者を無理やり奈落の下に落とすような方法は中々取れないと思います。

結局、不動産業界も建設業界も大手以外は烏合の衆で、業界団体は在っても適切な政治への働きかけは出来ずに、最近も不動産業界は「宅地建物取引主任者」を「宅地建物取引士」にして欲しいという意味の無い働きかけをして、業界が自民党を応援し続けてきたご褒美なのか法案は成立しました。

 

利害関係の複雑化、様々な分野の二極化、国の税収減により不利益を被る層へのバラマキも出来なくなり、政治や中央官庁には日本の方向性を定める力は無くなっています。

 

長嶋氏のような正論を言う人が少しでも多くなり、少しずつ日本の不動産・建築も変わってゆくしかないので、今後も陰ながら応援したいと思っています。