ソニーの不動産会社設立
先日ソニーは、不動産の売買仲介、賃貸管理をする事業に乗り出すことことを発表しました。
発表によるとソニーは今月、不動産事業を手がける子会社を新たに設立し、ことし8月から事業を始めるということです。
ソニーとしては、社長交代からちょうど二年、これから様々な新規事業を発表してゆくのでしょう。
しかし、偶然だと思いますがこのタイミングは非常に良かったと思います。
それは、今不動産業界が良いのは、リーマンショック→東日本大震災の買い控えの反動、消費税の駆け込み、団塊ジュニアの購入適齢期等の全てのタイミングがピッタリ合ったからであり、これから不動産市場は不動産の購入適齢期の人口の急激な減少、購入世代の所得悪化及び非正規雇用の増加で悪くなってくることが約束されているからです。
そして、既存企業が大規模な構造改革を迫られる中、良いところだけ真似して、低コストで参入すれば十分勝ち目はあります。
新規事業第一弾に不動産を選んだところから、おそらく残りも内需産業が続くような気がします。
世界市場の人材の層の厚さ、人件費の差、技術革新のスピードの速さなど、世界の舞台で全ての分野で戦い続けるのは大変です。
未経験分野を一から始めても、日本人との競争の方が楽だ思うのは自然な流れです。
問題点はどこでしょうか?
①賃貸管理
ポイントは、徹底的なコスト削減でしょう。
賃貸管理があまり今まで注目されなかったのは、その利益率の低さ、マンパワーが必要なことでしたが、アウトソーシンングの効率的な利用、正社員を徹底的に少なくすること、ITやコールセンターの活用で、利益率は改善できると推測します。
但し、大口や都心の物件を中心に管理会社変更を狙うのなら、余程のインパクトがある切り口が必要です。
問題が無い限り、所有者は管理会社を変えるのは面倒なので、そこにどうやって入って行くかです。
入居率の悪化や相続、売買などがきっかけになると思います。
急激には増えないと思いますが、事業スキームが甘くなければコツコツやれば赤字が出る業界ではないので、それなりの成功は納めるでしょう。
しかし、グループを浮上させるような力になるとは思えません。
出向・転籍先には良いでしょう。
②売買仲介
これは非常に理解しにくい業界です。
実際取引をしていても、この業界の本質を理解していない人もいる位に解りにくい業界です。
一言でいうと「飴とムチ」で人を使う業界で、数字が人格とも言われています。
いくらクリーンなイメージで売っている大手系列の企業でも、全ての営業マンは数字が命です。
売却の受注とその販売を中心とする「大手系」と、広告で購入希望顧客を集めて高率歩合給やフルコミッションで営業を行う「荒っぽい系」の二つに分けられます。
その他の会社はシェアは少ないと言っても良いでしょう。
大手系を目指すなら、チラシの定期的ポスト投函、看板、住宅地への電柱広告等、WEB上以外でも、あらゆる機会に目にするような広告展開をする必要があります。
売る顧客は、売ると決めるまでは全く不動産会社に興味はありませんが、ふと思った時に一番先に目に触れさせる必要があるのです。
あとは、成績を上げないと会社に居られないという企業文化も重要です。
このプレッシャーがないと成績が全然違うからです。
皆が目にする大手の会社も、ボーナスと言う名の歩合給という「アメ」と、上司の叱責という「ムチ」と大手の看板をうまく融合させて今に至っています。
購入顧客を集める会社は、多くの会社は歩合中心で、成績をそれなりに上げなければ生活できないようなシステムにしている会社が多いと思います。
高い買い物をするという心理的障壁を崩すには、非常に大きなエネルギーが必要だからです。
人の入れ替わりも激しく、基本的なことは当然知っていなければいけませんが、あまり難しい話をすると迷ってしまうので、知識は無い方が成績が上げれらる傾向があります。
顧客が物件を気に入ったと見えたら、キメることだけに集中できる人が良いのです。
このような状況で、どちらのタイプ選んでるのか興味があります。
全く違う素晴らしいビジネスモデルを構築してくれていると良いのですが、『購入顧客を集める広告戦略だけを練って集客できれば勝てる』ということですと、新築マンションなどでしたら良いですが、売買仲介の購入顧客で収益を上げるのは難しいと思います。(手数料のディスカウント等、画期的な策があれば別ですが)
買わない顧客は収益どころか人件費というお金を奪う人でしかない、他社と競合した時に勝てないといけない、ということを忘れてはいけません。
営業マンのモチベーションも大事です。
少し長くなりましたが、不動産売買仲介は非常に解りにくい業界です。
ソニーには、売買仲介の悪しき伝統を打ち破る、本当の意味での顧客本位の新しい仕組みを作って、ぜひ業界の悪習を破って成長して欲しいものです。