日本人の住まいの行方

住宅について考えます

中古住宅の流通活性化と問題点

 

国土交通省が、3月25日に、「不動産流通市場活性化・事業者間連携協議会シンポジウム」を開催する予定です。

 

内容は、インスペクションや瑕疵保険、住宅履歴等をパッケージ化した商品の開発や、一定の条件を満たした住宅の推奨制度の構築、不動産流通の場面でのリフォーム業者等との連携体制の構築等、様々なビジネスモデルの検討・普及が進めらたことを受けて、今までの活動を紹介・総括するとともに、事業者間連携の発展・普及に向けた今後の方向性について紹介するとのことです。

国土交通省が中古住宅の流通促進について、ここ数年多大な時間をかけて検討してきましたが、そろそろ仕上げの時期が来たということでしょう。

 

再三お伝えしているように、住宅購入年令の平均は37~38才前後、団塊ジュニアの人口の頂点は今年41才になります。

41才と5才下の年齢との人口差が17%減、10才差では27%程度人口が減少します。

さらに、非正規雇用の率も上がっており収入も安定しません。

 

住宅のストック過剰な中で、高齢者住宅は不足しており、高齢者が安心して施設に入るのには、現在持っている住宅の売却が必要な場合が多く、その価格や取引が安定しないと、サービス付き高齢者向け住宅の最低面積の25㎡(高齢者が共同して利用するため十分な面積を有する場合にあっては18㎡で、実際はこの面積の物件も多いと聞きます。)では立派な持ち家を持っていた人が入るとは思えません。

 

不動産仲介業ではおかしな現象が続いており、「買う側が弱い」という状況です。

 

それが何故かというと、買う側の不動産仲介会社は、どんな物件でも買ってくれないと1円の収入にもならないので必死に買ってもらおうとします。

少しでも早く契約してもらうために、顧客が気に入ったら「こんなに良い物件はすぐに決まるので早く契約した方が良い」といいます。

 

売る側の不動産会社は、売る人との媒介契約を交わして正式に売る業務を受けており、一人の買うお客を逃しても、ほぼ確実な手数料収入である売り主に負担をかけたくないので、中々買う側の思うように出来ません。

 

現在、売る側の依頼を受けるのは大手業者の場合が多く、大手業者は「住宅補修サービス」という、引き渡し後1年間の隠れた欠陥を仲介会社が保証するという、国策と違う方向性で進んでいます。

 

何故そうなるかと言うと、大手は売り側重視にシフトし続けないといけない理由があるからです。

大手の立派な本社と社員の高給を維持するには、売る側につき「売る側・買う側の両方から手数料を得る取引に依存」しなければならないからです。

どういう仕組みかと言うと、不動産仲介の場合、売却の依頼を受けた不動産仲介会社が買う人も見つけると、両方から手数料をもらえるので、二倍の収入になります。

 

売る側をしっかり押さえておけば、

 

①インターネットの普及により他の業者に頼らず、買う顧客も自分で探し二倍の収入が得ることができる。

②不動産会社に買わせて楽に二倍の収入を得ることが出来る。

 

と言うことです。

 

①はいくら瑕疵保証をしても、決めること優先では国が求めている買う側の安心は提供することが出来るか疑問ですし、利害を別にする買主と売主の両方の間に入ることは好ましいとは言えません。

 

②については、もっと根が深い問題で、一定の不動産は面積や状況によって個人では手を出しにいので不動産会社に買ってもらう意義があるのですが、大手の名前を信用し相場を知らないことに付け込み、個人に売ればもっと高く売れる物件を楽に二倍の手数料を得るために不動産会社に売却する、という取引も多いのです。

 

今後は、一部都心及び周辺エリア以外は購入する顧客が激減し、買う側が主導権を握るようになりますが、大手業者は売却を受けている物件を買いにくる顧客、すぐに買いそうな顧客等以外の、買わないかもしれない顧客に時間をかけるとビジネスモデルが成り立たないのです。(但し、これは業界全体の問題ともいえます。)

 

買い手が力を持つようになるのが必然ですが、購入する側の力も分散して中々力を持ちにくい現状もあります。

既存の不動産団体は、新しい方向性に持ってゆく力を持っているとは思えません。

 

一部には新しい動きはありますが、知名度が高いセンチュリー21などが、先頭をきって新しい仕組みで、本来なら重視されるはずの中古住宅を買う側が安心して購入できる仕組みを作って実践して欲しいものです。